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一般財団法人先端建設技術センター WEB記事

土砂を食べるフグ"マジックボール"を取材しました。~その②(取材日:H25年6月12日、26日、7月19日)

 前回紹介したマジックボール(愛称:「ふぐ太郎」)。
 松阪市のとある工事現場における「ふぐ太郎」の使い手、東亜建設工業㈱ 小西 豊氏を訪ねた。ガラスを研磨する際に発生する濁水の沈砂池に溜まる研磨剤を浚渫する工事である。通常業務に支障がないよう、池の水を抜かずに作業できる方法を模索していたとのことである。台船を搬入するような工事用道路も造成できなかったため、資機材の搬入が容易なこの新技術が採用されたようである。
 いかにも上手に使いこなしそうな風貌。

 簡単な現場説明のあと、早速現場へ向かったが、生憎の大雨。しかも横殴りである。がんばって写真に収めようと努力したが、右の写真のとおりとても撮れそうにない。あきらめて、施工状況の写真を頂いたので、それで説明したい。

 上は、まだきれいな顔をした潜水前の「ふぐ太郎」。よく見ると、ご説明いただいた形状(スライド1枚目参照)と違い、釣鐘状となっており、下部にタコのような足もある。これは土質が粘性土でも対応できるように創意工夫した結果であり、特許も出願しているそうである。下はいよいよ潜りはじめる「ふぐ太郎」の勇姿である。

 台船に搭載したウインチで、岸につなげているワイヤーを引っ張りながら、ふぐ太郎の位置を調整する。(写真左)台船の周りが黒く深くなっているのがお分かりであろうか?右は台船側から覗いた写真だが、溝ができているのはふぐ太郎が堆積土砂を食べた跡である。

 ふぐ太郎が食べた堆積土砂は、125mmの管により約300m先まで2箇所の中継ポンプを介して圧送される。排出量は2.0m3/min程度(圧送距離によって変わる)、含泥率は10~15%程度である。
※画面をクリックすれば、マジックボールの排泥状況を動画にて確認できます。

 現場は約3000m3の浚渫を2ヶ月で完了したそうである。(仮設工等の準備除く)
 任務を完了し、疲れ果てて家路につく「ふぐ太郎」の写真を後日頂いた。

 話は変わり、このマジックボールを利用した、がれき混入土の改良に関する社会実験の様子である。(場所:宮城県大郷町)
 前回記事でも記載したが、写真左の実験設備は3つの新技術のコラボレーションとなっている。まずはある程度がれきを取り除いた土砂をマジックボールの「ふぐ太郎」が吸い上げる。(写真右上下)

 2番目の新技術は「ソイルセパレータ・マルチ工法」。同じく東亜建設工業㈱が開発した。
 ごみやがれきなどを分別し、粒径ごとに土砂を分級、最終的に残された粘土分を含んだ泥水について凝集沈殿および脱水処理を行うことにより、粘土分もフロックとして抽出できる。また脱水処理後の水もごみ混じりの土砂へ加水するために循環・再利用するという優れものである。
 動画は、ふぐ太郎が吸い上げた泥水を振動ふるいにより分級している様子である。しばらくすると、動画右側から粒径の揃った礫が排出される様子が確認できる。ふるいを通過した泥水はサンドポンプを介して再度この振動ふるいにかけられる。ふるいは2階だて構造となっており、2回目は2階部のふるいでさらに細かい砂分を排出するような仕組みになっている。
※画面をクリックすれば、振動ふるいの稼動状況を動画にて確認できます。

 振動ふるいにより砂礫分を除去した泥水が、今度はフロック脱水装置へ運ばれる。左の動画は、遠心分離装置により泥水の粘土分を凝集沈殿させている様子である。中央に置かれたコップには、凝集沈殿に用いる凝集剤が入っている。
 右上の写真はスクリュープレスといい、凝集沈殿した含水比の高いフロックが、この筒の内部で回転するスクリューによりこの傾斜を上りながら脱水されていく。この傾きを変えることにより脱水具合を調整できる。下の写真は、スクリュープレスの先端から落ちてきたフロックである。ここまでが、「ソイルセパレータ・マルチ工法」の一連の流れ。
 このフロックを再利用するための3番目の新技術が、技術情報誌NETISプラス特別号でタイ国へ紹介したボンテラン工法である。
※左の画面をクリックすれば、フロック脱水装置の稼動状況を動画にて確認できます。


 ボンテラン工法は左写真にあるような、細かく裁断された古紙をヘドロ状の土砂にまぜて改質を図るものである。今回の実験ではハンドミキサーを使って古紙を攪拌したが、動画を撮り損ねたので、筆者がタイで攪拌したときの動画を掲載する。(右下の画像)
※右下の画面をクリックすれば、古紙攪拌状況を動画にて確認できます。

 フロックは緑化基盤材として再利用される。袋詰めにして「繊維質処理土 ボンテラン」という製品に生まれ変わった。法面の緑化吹付けや屋上緑化等に使えるようである。

 今回実験の成果である緑化基盤材は、名取市にある試験盛土体(宅地嵩上げ時のイメージ確認用)の法面緑化に全量活用された。右下の写真は施工後1ヶ月の状況だが、植生が順調に進んでいる。

 左はふぐ太郎(「マジックボール」)の生みの親であり、「ソイルセパレータ・マルチ工法」の開発者でもある泉信也氏、右が「ボンテラン工法」開発者の東北大学 高橋 弘教授。泉氏は東北大学の出身で、高橋教授の研究室を卒業されたそうだ。「ソイルセパレータ・マルチ工法」から排出されるフロックを、いかに固化してリサイクルするか悩んでいたところに、今回実験内容の道筋を示したのが恩師の高橋教授だそうである。
 ボンテラン工法、マジックボールともに国土技術開発賞受賞技術だが、取材中、偶然にも「ソイルセパレータ・マルチ工法」も国土技術開発賞最優秀賞(国土交通大臣表彰)を受賞した。
 3つの新技術のコラボレーション。技術者同士のつながりと、その人が持つ技術力の摺り合わせにより、新たな効果を生み出した好事例である。

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