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一般財団法人先端建設技術センター WEB記事

極東建設が港湾工事を変える! 水中専用建設機械『水中バックホウ』を取材しました。(取材日:平成25年3月3日)

 極東建設は、水中専用建設機械を独自で開発し、港湾工事を主体として沖縄県から全国に展開する会社です。また、当センターでも検討を行っている無人化施工※に関する技術開発も積極的に行っています。
 今回、技術調査部では極東建設が開発した水中専用建設機械「水中バックホウ」を取材しました。
※無人化施工:ラジコン装置等を取り付けた無人の建設機械群をオペレータが遠隔地からカメラ映像等により操作することで、危険区域に人が入らずに作業するための技術およびシステム。

 潜水士による捨石敷均し
 従来の港湾工事における水中作業は、潜水士が主体となって施工しており、なかでも防波堤や護岸等の基礎マウンドの捨石敷き均し作業は、多大な時間と人員を要して施工を行っています。また、近年、沖合いにおける港湾事業の展開により、海象条件が厳しい大水深度での作業も増えているそうです。

 水中バックホウは、港湾整備事業の沖合・大水深度化およびこれらの潜水工事作業者に従事する潜水士の高齢化に伴い、水中作業の安全性の確保、作業効率の向上、工期短縮を図ることを目的に開発された水中専用建設機械です。

 水中バックホウは、動力源と制御装置を陸上または船上に置き、ケーブルを介して機械本体の水中モーターに電気を送り、油圧ポンプを動かす電動油圧方式を採用しています。水中バックホウに電気を送るケーブルは、標準装備で150mとしていますが、現場状況に応じて延長することが可能で最大800mまで継ぎ足して施工をした事例があるそうです。
 なお、機械本体の駆動に使用する油脂類(作動油とグリース)は、自然界の微生物で水と二酸化炭素に分解できる生分解性のものを使用しているため、流れ出ても海を汚染することがないよう、環境にも配慮した取り組みも行っているそうです。

 水中バックホウ運転席
水中バックホウの運転席は、緊急時にオペレーターが浮上できるよう上部は開放されて、左右のフレームのみの構造になっています。
 機械の操作は、基本的に陸上のバックホウと同じで潜水士と車両系建設機械技能講習修了者が運転することができます。しかし、油圧回路や電気の取り扱い等は専門知識が必要になるため、機械を販売する際は、購入者に対して極東建設が特別教育を実施しているそうです。

 水中ファンは、運転席の反対側に装備され操作時に舞い上がる土砂を32m3/minの流水で除去し、オペレーターの視界を確保します。
 動画は、別の現場で掘削作業を行っている状況です。水中ファンから発生する流水が掘削箇所に当たり、舞上がった土砂が消える様子がわかります。
※画面をクリックすると、水中バックホウの水中ファンの稼動状況を確認することができます。

 開発当初は、水中モーターとケーブルを繋ぐ構造が複雑だったため、水中での脱着に手間取っていましたが、油圧回路の見直しによるケーブル本数の削減、ロック方法の改良などの試行錯誤を繰り返し、現在の構造になったそうです。
 改良型の水中コネクターは、施工中に海が荒れた場合、制御ユニットから延長された水中ケーブルと水中モーターを繋ぐコネクターを抜いて、機械本体をそのまま水中に置き、直ちに船舶が港に退避できるよう、容易かつ短時間で脱着できる構造になっています。

 沖縄県石垣市内の沖縄総合事務局石垣港湾事務所が整備を行っている石垣港新港地区港内の現場を訪ねました。
 工事は、ケーソンを仮置するマウンド基礎を造成するというものです。

 現場は、大型旅客船に対応した専用の係留施設・水域設備の整備を行っている新港地区から1.5km程度離れた場所に位置しているため、起重機船が係留している防波堤までは通船に乗って移動しました。

 起重機船へ乗船した時には、既に水中バックホウの現場投入に向けた準備が進められていました。特殊な環境下で行う作業ということもあり機械・設備等の点検には余念がありません。
 水中バックホウの施工編成は、海上でのケーブルを繰り出す支援員、潜水士に送る空気を調節する送気員、潜水士に潜降と浮上を適正に指示する連絡員、海中で機械を操作するオペレーター、サポートを行う潜水士となっています。

水中バックホウの現場投入状況その①
 極東建設は、水中バックホウを支援する専用の船舶を開発しており、船内には、動力源となる可搬式発電機と制御ユニットの他に機械本体を水中へ投入するための下部スライド式の櫓(やぐら)が装備されていました。
 水中バックホウの水中降下は、専用のウインチで機械本体を一旦吊りあげてから、スライドゲートを船首側にスライドし、ゆっくりと水中へ降下させて水底へ着底させます。
※画面をクリックすると、水中バックホウの現場投入状況を確認することができます。

 支援船には、モニタが設置してあり、支援潜水士が水中有線カメラで撮影した海中の作業状況を海上からリアルタイムで確認することができます。 船上のモニタから見た海中には、既設防波堤の法面傾斜が見えなくなるまで伸びており、さらにその先には、既に仮置きされたケーソンがそびえ立っていました。

 捨石荒均しの作業は、オペレーターが計画高さに張られた水糸を見ながら行います。マウンドの凹凸に合わせて捨石を置き、バケットの背面で叩いて均し、支援を行う潜水士がマウンドの水平を確認します。今回の施工では、潜水士が人力作業で行った場合、60日程度かかるものを水中バックホウでは、12日で行えるそうです。
※画面をクリックすると、水中バックホウの施工状況を確認することができます。

 施工後のマウンド基礎は、水中バックホウによって計画の高さまで捨石が積み上げられ、バケット背面でしっかり締め固めているため、凹凸がない平坦性なマウンドができています。また、法面も石垣のように綺麗な傾斜が造成されていました。

 この技術の開発に力を注ぐ極東建設株式会社 マリン開発部の上山 淳氏。 水中という特殊な環境下で施工を行うため、潜水士、支援員等の安全性の確保も重要で、それらを含めた技術伝承を確実に行うことが課題だと考えているそうです。

 NETISプラス第5号では、着目新技術として極東建設の無人化施工、大水深度施工の技術開発についての取り組み、沖縄県糸満市で実施している水陸両用エンジンユニットを搭載した水中バックホウの取材記事を掲載する予定です。

 現場取材許可を頂きました沖縄総合事務局石垣港湾事務所、並びに取材に協力して頂きました極東建設の社員の方々に、この場を借りて心よりお礼申し上げます。
(技術調査部:中原 守

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