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一般財団法人先端建設技術センター WEB記事

土留め不要!! 安定液掘削によりボックスカルバートを沈埋敷設する工法“プラス工法”を取材しました。(取材日:H25 年4 月18,19 日)

 技術開発に積極的なライト工業。当センターが運営するNETIS プラス新技術情報データベースで調べると、何と52 件という新技術が掲載されている。
 その中で、主に自治体で採用され直轄工事での実績が少ない、下水道管等の敷設工法“プラス工法”に当センター技術調査部は着目、その独特なボックスカルバート敷設現場を取材した。場所は埼玉県新座市大和田地内、新座市発注の工事である。
 現場は民家に接しており、かつ架空線が密に横断する、施工管理が困難そうな箇所に位置している。

 “プラス工法”とは、ベントナイトを主成分とした特殊配合の“プラスマッド”を用いた安定液により、壁面が崩壊しないよう防護しながら溝を掘削、ボックスカルバート等を沈埋して所定の位置に敷設する工法である。敷設完了後、安定液を固化することで従来必要な埋戻し工も不要となる。
 写真左は掘削溝を水で満たした場合のモデルである。真ん中に設置した仕切り板を撤去すると、とたんに壁面は崩壊する。右はプラスマッド安定液で満たしたものだが、この高粘性・高比重の液体は掘削面の土圧に対抗するため、仕切り板を外しても壁面は崩壊しない。

 今回敷設するボックスカルバートは内空幅2500mm×内空高さ1500mm で敷設延長167.5mである。
 嵌合継手構造※1となっており、地震時には柔な挙動を呈すため耐震性に優れるものである。
 すでにこの時点で、プラス工法用にさまざまな工夫が施されており、写真はその説明を受けている状況。

※1嵌合継手構造:差し口と受け口から構成される噛み合い継手を言う。写真のボックスカルバートは手前側(黒い止水ゴムの巻かれた箇所)が差し口であり、奥側は差し口を受け入れるような構造になっている。

 プラスマッド安定液をグラウトホース(掘削部右奥)より注入しながら、先行設置したガイドウォールを頼りに、バックホウにより溝を掘削する。
 床付け高さはボックスカルバートの底面より30cm 程度深い。この工法はボックスカルバートを宙吊りにした状態で固定し、底盤部の安定液を固化させて荷重を受け持たせる。

 プラスマッド安定液は、仮設ヤードに設置されたプラントにて作泥し、現場へ圧送する。プラントはセメントサイロ、ノッチタンク、ミキサー、グラウトポンプ等で構成されており、150m2程度の面積が必要とのこと。

 安定液は粘性、比重の管理が重要であり、品質が十分でないと壁面は崩壊し大事故につながる。失礼ながら、ファンネル粘性試験※2の実施を急遽お願いしてみた。
 自ら測定したがフロー値は38秒、この現場の土質の場合、許容値は32~40秒のため基準を満足している。この後比重も確認させてもらう。
※2ファンネル粘性試験:安定液を円錐状の容器一杯(500CC)に満たして、容器下部の穴から安定液がすべて落ち切るまでの時間(フロー値:秒)を計る試験。液体の性状に応じてフロー値は変わるため、安定液に必要な粘性の管理に用いる。

 設置に必要な資機材をボックスカルバートの天端部にあらかじめ取り付け、ゆっくり沈埋していく。これらの資機材は、沈埋後に撤去・回収できるよう考えられている。
※画面をクリックすれば、ボックスカルバートの沈埋状況を動画にて確認できます。

 既設ボックスカルバートの天端に取り付けられたガイド鋼棒に油圧シリンダーの先端を差し込み、位置をコントロールしながらボックスカルバートを沈めていく。
 油圧シリンダーはこの後、安定液の中に沈みゆく運命にあるが、壊れずに再利用できるよう耐久性を高める様々な配慮がしてある。ここにも独自の工夫があった。
※画面をクリックすれば、ボックスカルバートの沈埋状況を動画にて確認できます。

 油圧シリンダーにはストローク計が内蔵されており、長さをmm単位で管理できる。ストローク長をモニターで確認しながら油圧シリンダーをレバーで操作し、沈埋したボックスカルバートを既設部側へ慎重に引き寄せていく。

 ボックスカルバートの端面を鋼製の"セクション仮蓋"で締め切る。さらに、防護壁である"仕切り板"を建て込む。(写真)
 サクション仮蓋の役割は、最終工程で安定液にセメントミルクを注入するが、このセメントミルクがボックスカルバート内に流入するのを防ぐ。
 また仕切り板は上部が箱状になっており、ガイド鋼棒が通る孔が設けられている。この役割は、ガイド鋼棒周囲の安定液が固化することを防ぎ、さらに次に掘削する際、バックホウのバケットにより既設ボックスカルバートを損傷させない目的も兼ねている。

 このボックスカルバートは嵌合継手構造のため、差し口を既設部の受け口側にはめ込む作業が最後に必要である。この現場では吸引方式を採用した。
 吸引方式とは、ボックスカルバートの内空部に充満しているプラスマッド安定液をサクションポンプで吸い上げ、圧力を低下させる。それにより生じる管外との圧力差を利用し、受け口に差し口を吸引するものである。
 (映像ではわかりにくいためアニメーションで説明する。)
※画面をクリックすれば、吸引方式を説明したパワーポイント資料をアニメーションでご覧いただけます。

 最後は固化工で仕上げる。プラントよりセメントミルクを圧送注入し、圧縮空気を用いて混合攪拌する。材齢28日で約200kN/m2の圧縮強度が得られ、この工程が埋戻しの代替えとなる。
※画面をクリックすれば、固化工を説明したパワーポイント資料をアニメーションでご覧いただけます。

 ライト工業㈱施工技術本部下水道グループ長の飯田 陽朗氏。今後はプラントヤードのコンパクト化が課題であるという。
 この工法は狭隘な市街地における上下水道の構築で活躍する。その際、プラントヤードの確保が常にボトルネックとなっているようである。
 技術の更なる改善に期待したい。

 プラス工法の採用を決めた発注者:新座市役所上下水道部 部長の土屋 誠氏にも話を伺った。

 "河川近傍ゆえに地下水位が高く、民家に近接しているという厳しい現場条件であったため、周辺環境への影響や、地盤改良・水位低下等の仮設工も含めたコスト等について様々な工法と比較検討した。その結果、新座市として初めてプラス工法を採用している。今回の結果が良好であれば、今後も同様な現場において活用していくことも検討したい。"

 最後にプラントの前で記念撮影。
 取材許可を頂きました新座市役所の方々も含めまして、この場を借りて御礼申し上げるとともに、皆様の更なるご活躍を祈念いたします。

(写真左から、ライト工業㈱部長の祖父江氏。新座市との調整をお願いした。
続いて今回詳細に技術を説明していただいた飯田氏。
隣で緑のユニフォームを着用している方が当現場の代理人、エムテック㈱山村所長。
ライト工業現場責任者竹内氏、ライト工業グループ長、関氏と続き、一番右が当センター技術調査部吉井主事。)

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